経営者はなぜ、高い報酬をコンサルタントに払うのか。ひとつ例をあげよう。
『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』というマーケティングの本がある。
この本のイントロダクションで
グレイトフル・デッドは、今あらゆるビジネスで注目を集めている「ソーシャルメディア」を活用した最先端のマーケティングの多くを、1960年代にすでに開拓していた。
書いている。そう、クリス・アンダーソンが『フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略』の中で提言した、フリーミアムという新しいビジネスモデルを、50年も前にグレイトフル・デッドというヒッピーバンドはすでに行なっていたのだ。
そこから学ぼうというのがこの本の主旨なのだが、例えば、コンサルタントである私が、この本を読み、この方法を取り入れたら、それが間違いなくはまる企業が頭のなかに浮かんだとする。
そして次回訪問時に「これを読んでみてください。雷に脳天をうたれたような衝撃が社長の体を突き抜けるかも知れません」と言って渡したとする。
ああ、ありがとうと本を紹介された社長が時間があるときに開いてみたら、頭のなかにモヤモヤとなんとなく合ったものが、ここに全部書いてあったよ河村さん、と興奮して電話をしてきたとする。
構想が一気にまとまり、会社の向かう方向性がみえた社長は、徹夜で一気にプロジェクトを立ちあげ、さっそく、新年度からとりいれたとする。
このプロジェクトは社員の心をも大きく動かし、なんとなくわかっていたが、明確でなかった企業理念が、社員ひとりひとりに知れ渡り、新年度は前年対比売上が20%も伸びた。100億の企業なら20億の売上が増えたことになる。
もちろん、要因はこれだけに限らないが、このことが影響しているのはどうやら間違いない。20億のうちの10%にあたる2億がこのプロジェクトからの効果だと仮にすると、社長は私に、いったいいくら払うだろうか。
そういうことなのです。コンサルタントが実際にしたことは、本を読んで、よかったからそれを社長に紹介した。たったそれだけなのです。それって、誰でもやりますよね、これよかったから読んでみって。
それが、ある場所で行われることで、とんでもない結果を生み出すんです。マッキンゼーや、アンダーセンがとんでもない報酬を取るのはそういうことなのです。
時給換算で作業量で報酬を計算するのは難しいですよね。このアドバイスでクライアントの信用を得たコンサルタントは、来年の契約が年間1000万円になるかもしれません。本を読んですすめただけですよ。コンサルタントの報酬が高いのは、こういっった事があるからなのです。
逆説的には、値段をつけるのが難しいということになります。え?お薦めの本を紹介してくれただけやのに、なんで100万円も払わないといけないのってなりやすいです。形がないものですからね、アドバイスは。だから、高額をとるコンサルタントは分厚い資料を用意したりするのです。
これだけやってますからねというのが視覚化されるからです。
目利きのある経営者は、敏腕なコンサルタントを雇います。コンサルタントはピンきりですからね。
私にコンサルを依頼する経営者の目はものすごく超えているのでしょう。こんな風貌の俺にお金を払おうと言うのですから。本物を見抜く目があるのでしょう^^
本を見て、これはあの企業にはまると瞬間的に判断するために必要な情報や経験はとんでもない量と質です。それを脳の中に埋め込むために、コンサルタントは膨大な時間とお金をかけているわけです。
だから、コンサルタントの報酬は高いのですね。高い報酬にはこういった理由があるのです。